日本農業技術検定試験 合格者体験記 令和元年度

全生徒が3級を受検、"検定学習"で農業基礎知識の定着を図る(熊本農業高等学校)

 2級に挑戦する生徒も多く、検定資格を取得して大学進学や農業関連企業への就職にいかす。

 県立熊本農業高校は明治32年(1899年)に創設され、121年の伝統を誇り、校訓「敬天愛人」、建学の精神「其手足を低き地に動かし、心を高き天に置けよ」のもと、農業教育を通して豊かな人間性と社会を生き抜く力を育み、社会とともに進化し続ける人材を育成し、活気に満ちた学校創りを実践しています。 農業科、園芸・果樹科、畜産科、生活科、農業経済科、食品工業科、農業土木科の7学科21クラス、生徒総数860人の全国でも有数の単独の農業高校です。 生徒たちは学校農業クラブ活動に真摯に取り組んでおり、元年度(2019年度)には農業鑑定競技会やプロジェクト発表会で全国最優秀賞を受賞しています。部活動も盛んに行われ、相撲・馬術・ボクシングでは全国でも輝かしい成績を残しています。
 本校では、入学案内パンフレットで各学科での取得可能資格として日本農業技術検定を掲げています。1年次の授業で「農業と環境」を学習し、2年次の農業技術検定学習で農業の基礎知識の定着を図っています。また、選択科目については、それぞれの学科の特性を活かした教科のなかで学び、専門知識を深めているため、生徒もやりがいを持って検定の学習に臨んでいます。 農業学習を積んだ2年生の生徒約200人が3級を受検します。3年次には3級合格者を中心として2級の受検に挑戦する生徒も多く、農業知識を深めることで大学進学や農業関連企業への就職に結びつけることができます。特に、農業系大学では推薦入試等で農業技術検定の資格取得が参考にされることや授業料の減免などのメリットもあります。また、農業技術検定の資格を取得することで、本校のアグリマイスター上級取得者も増加しています。
 現在、2年次の12月を「全員受検」と位置付けていますが、今後はこれを1年次から受検するように各科で連携していくとともに、さらに上級取得のチャンスとそれを目指す生徒が増えるように、学校全体で取り組んでいきます。


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2級の団体受験を農学部で新規導入して農学系人材育成の一助に(茨城大学農学部)

 茨城大学農学部の教育目標は、国際的な視点による食料・食品の高度化および農業を核とした新産業創出で、地域の農業・地域コミュニティの活性化を支える実務型農学系人材を育成することだそうです。 
 そのため、農学部の学生が卒業時に身に付けているべき目標(ディプロマ・ポリシー)として、グローバル社会における農業・食料問題の包括的な理解や総合科学としての農学分野の専門知識と技術の修得などの能力を掲げています。
 農学部には食生命科学科と地域総合農学科があり、国際附属農業研究センターでは農場実習も行われています。令和元年度の日本農業技術検定については、作物学研究室が中心となって7月に有志でテスト受験を行い、12月には45人で2級の団体受験にチャレンジしました。卒業生は国・県庁公務員や試験研究機関、食品企業などに進むことが多く、就職にあたって学生の専門科目のスキルアップ、キャリア取得の促進を目的にしているそうです。

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農場実習の一環で1・2年生225人が受験、知識の修得が実習の理解を深める
(日本大学生物資源科学部)

 日本大学生物資源科学部の生命農学科では、1年生と2年生が受講する農場実習の中で日本農業技術検定の受験を取り入れています。合格目標は1年生が3級、2年生では2級としています。7月に1年生、2年生の約250名を対象に検定ガイダンスを行い、12月の検定では225人が受験しました。
 農場実習では、検定試験の内容に関するものをできるだけ取り入れて、学生にとっては実物を見ながら勉学できるので大変わかりやすくなったそうです。実習で本検定試験を受けるようになったことで、学生の目的意識が明確になり、農場実習に対する取り組み方も真剣になり、卒業後、農業に関する職業をめざす学生には修得している専門資格としてアピールできることをめざすとのことです。




組合員(農業者)との接点強化にむけて全正職員の3級資格取得を促進(JA上伊那)

 JAあげて「営農相談員」資格取得のために要件である3級の団体受験に取り組む。

 JA上伊那は、長野県南部に位置する中央アルプスと南アルプスに囲まれ、南北に沿って天竜川が流れる「伊那谷(かみいな)」と呼ばれる地域にある。管内の産業は、電子部品・輸送機械・情報通信などの工業もあるが、水稲を中心とした多品目栽培の農業も主要産業の一つである。桜の名所としても有名な高遠城址公園や中央アルプス駒ケ岳ロープウェイなど自然にも恵まれている。
 JA上伊那の管内は、伊那市、駒ヶ根市、辰野町、箕輪町、飯島町、南箕輪村など2市3町3村にわたり、農協の組合員は正准30,700人、職員は正職員496人、総勢858人の大きな農協である。農産物の販売額では、米は県下有数の産地であるほか、小麦は強力粉の「ハナマンテン」、野菜はアスパラガス、白ネギ、ブロッコリーなど、リンゴは極早生種の「夏あかり」から晩生種の「ふじ」のほか長野県オリジナルのりんご3兄弟の「秋映」「シナノスイート」「シナノゴールド」、花は生産量日本一を誇るアルストロメリア、上伊那オリジナルの品種が中心のトルコギキョウなど、総額約140億円の販売額を誇っている。
 JA上伊那は、全職員にJA職員の基本である「農」の基本的な知識を身に付けて意識を高め、組合員との関係強化に役立てるため、「営農相談員」資格の取得を必須とした。令和元年度からは、JA長野県グループで「営農相談員」資格の取得条件を日本農業技術検定3級取得に切り替えたことから、当該農協においても既存の「営農相談員」資格の要件を日本農業技術検定3級合格とした。 「営農部門以外の職員を含め全職員が、スタンダードレベルの農業知識を持って組合員とコミュニケーションをとっていかねばならない」との方針を掲げてJA上伊那が取り組む2本柱として、①「営農相談員」資格取得と、②毎年全正職員を対象にした「農家体験実習」がある。
 「営農相談員」資格は、平成30年までに既にあった旧制度で109名の認証があったが、日本農業技術検定を活用して昨年度から元年まで新たに189名の登録(3級合格率は8割を超えている)がなされた。この「営農相談員」の認証取得は3か年計画で進めており、来年も未取得者には検定を受験してもらう計画だが、臨時職員にも自主的に受験する動きがでてきている。長野県下では、JA上伊那のような全職員に検定資格を取らせることにはなっていないが、元年度は11JAが一斉に日本農業技術検定の団体受験に取り組んでいる。

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組合員(農業者)との接点強化にむけて若手職員294名が3級資格取得に挑戦(JA香川県)

 JA組織・経営強化のために幅広く農業基礎知識を習得して人材の育成をめざす。

 温暖な瀬戸内海の気候に恵まれた香川県では、冬レタスやブロッコリーなどの野菜、マーガレットやナランキュラスなどの花き、麦などの生産が盛んである。JA香川県は、県内43JAが合併して平成25年に県下1JAとなり、正准組合員は約13万9千人、正職員は約2千1百人、販売額は約400億円である。
 JA香川県では、新規採用職員や若年層職員を中心に農業に関する基礎知識を身に付けるために、県内各地域の農家に出向いて農業体験を実施しているほか、令和元年から管内4会場において日本農業技術検定試験3級を35歳未満の職員を対象に受験することとした。12月には294名が受験して、合格率は約8割であった。3級の受験は若年層の職員約700人が対象となり3か年計画で取り組み、検定受験は組合員のニーズに対応できる職員を育成するために実施するもので、担当業務だけでなくJA職員として農業の基礎知識を修得して組合員や地域の方々の負託に応えられる職員に成長することを期待してのものである。